鳴り響く終業のチャイム。
それとほとんど同時に筆記用具をひっつかみ、ブタのペンケースにからからと流し入れる。
机の横でおとなしくぶら下がっていたぺんが、もちもちよじ登ってくる。
その姿に微笑むと、脇の下に手を入れて抱え込んだ。
わいわいと賑わう教室を横切り、ぺんとふたり、少し離れた席へと向かう。
そこにいるのは、真白の髪をした少女。
──社 夢璃(ヤシロ ユーリ)。
幼い頃よく遊んでいた彼女が帰国し、再会が叶ったのは、つい先日のことだ。
その上クラスまで同じだったと来ているのだから、嬉しくないはずがない。
「ユーリちゃん!」
弾んだ声を投げかける。
既に帰る準備も万端のこちらに対して、あちらはまだノートと教科書を整えていた。
長い睫毛がわずかに震え、俯いていた視線がこちらを見やる。
……と。
「一緒にかえっ……わ!?」
不意に途切れる呼びかけ。
少々急ぎ足が過ぎたらしい。
そのまま勢いよく、前につんのめりかける。
「こはる……!」
小脇に抱えていたぺんが、ぐいんと質量を増したのと。
慌てたようなユーリの声が響いたのは、ほぼ同時のことだった。
クッションサイズになったぺんが、ぽよーん、と倒れかけた小晴の身体を支える。
おかげで痛みは欠片もなかった。
ぱちくりと目を瞬かせながら、ユーリの能力を思い出す。
他者の異能を強化する──力。
「転んじゃうかと思った……よかった」
屈みこんだ少女の手が、こちらに向かって差し出される。
わちわちとやわらかなぺんのはねが、小晴の身体を支えながら撫で回す。
……どうやら、ふたりに助けられたらしい。
「心配かけて、ごめん……」
気をつけないとね、と小さく呟く。
反省しながらの謝罪の言葉に。
「このくらい」
いつも静かなユーリの唇が、ふわりと弧を描く。
……優しい笑顔。
小さな頃にも何度も見た
気がする──それ。
「気にしないで。……私たち、お友達なんだから」
……どうしてだろう。
その言葉に、なぜだか胸が震えた。
ありがとう、と、そう告げなければと思うのに。
しばらくの間、ぼんやりとその微笑を見上げてしまう。
──伸べられた“ともだち”のあたたかな手のひらが。
きゅっと、小晴の手を握り締めた。
3月×日 ちょっと寒いけど晴れ!
ユーリちゃんと一緒に帰る。
こないだゆう兄が買ってきてくれたおみやげの草団子がおいしかった話をした。
今度一緒に行けたらいいな!