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ジョウヤ 「……あれ、ここは……?」 |
気つけば、見慣れているようで見慣れない景色。先程まで千堂寺で電気設備事情をどうしようかと筆記で計算や今後の方針を考え込んでいたら、目の前が一変していた。
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ジョウヤ 「確かこの世界がハザマ……とか言っていたな。あの黒スーツ」 |
イバラシティとは地形が似ているようで、異なった次元の中にある……だったか。……オレでさえ、一体どうしてこうなったのか理解出来ないまま、周りを見回していると
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?? 「……こんな所に、閏井橋丞哉が居るとは」 |
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ジョウヤ 「ん、誰だ」 |
聞き慣れない男のような声でオレの名前を聞き、思わず声の主が居るであろう後ろに振り向く。そこに居たのは――オレより背丈程の超大型の黒狼が立っていた。その黄色く灯す目に睨みつけられ、思わず足がすくみそうになるがどうにか持ち直し、黒狼と向き合う。……でもこの感じ、初めて会った気がしない。
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?? 「おっと、申し遅れた。我が名は『リグニス』。そうだな……イバラシティとは違う世界から来た者で、同時に……お前と知り合いである人物の……本当の姿だ」 |
その自己紹介を聞いて全てが繋がった。この感じ、あの黒狼から感じ取れる魔の気。イバラシティとは違う世界から来た者というのは……おそらくはアンジニティだ。そしてオレとの知り合い……
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ジョウヤ 「まさか、隆真……閑流……!?」 |
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リグニス 「……ご明答」 |
繋がったものが全て確信へと変わり、咄嗟にオレは数珠を持ってリグニスに向けて構えた。アンジニティ……この世界に来たのは侵略が目的であることが聞いている以上、相手が誰であれ容赦しない。
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リグニス 「……我がアンジニティの者だと思って構えているのか」 |
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ジョウヤ 「そうとも! アンジニティはこのイバラシティに侵略しに来たんだろ? それならオレやイバラシティの住民との対立するのが定めだ!」 |
リグニス:成程。ならば我とお前も対立するのは定めというわけか。良いだろう、ならば我も容赦なく歯向かおうぞ
お互いが構えて睨みつける緊張が高まる空気の中、オレは深く考える。果たしてあの黒狼に敵うことができるのだろうか。そして、この世界でオレの異能は使えるのだろうか。不安によって押しつぶされそうになりながら次の一歩を踏み出そうとすると……
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??? 「NO、NO、NO、NO!!!」 |
遠くから別の男性の声が聞こえ、全力のスライディングでオレとリグニスの間に入って止める。見た目からして仮面を被っており、日本神話のような和装の服装かと思いきや仏教の服装も織り交ぜているその容姿。――まさか。
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??? 「ジョウヤ! 違う世界から来たからと言ってすぐにアンジニティと断定しない! リグニスも、相手が殺気を出したらすぐに殺意むき出しにしなーい!」 |
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ジョウヤ 「……ホンダワケ様?」 |
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ホンダワケ 「ホンダワケだよぉ~。この姿で顔合わせするのは初めてかな? そんじゃ、前振りはここまでにしてお互いカミングアウトタイムにしよう!」 |
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リグニス 「と、言いたいところだが……」 |
周りを見てみると、オレ達の周りにはモンスターの群れが。
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リグニス 「この場での長居は危険だ、先に逃げるぞ」 |
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ホンダワケ 「その先に他のイバラシティの面々と合流できるし、安全なポイントがある。そこで色々と話そう」 |
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ジョウヤ 「はい。気になることが沢山ありますので容赦なく聞きますよ。勿論、あのリグニスという黒狼もな!」 |
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リグニス 「お坊さんなのに実にお坊さんらしくないようにも見えるが」 |
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ジョウヤ 「公私を分けているんだよ!」 |
結局詳しいことは何一つも分からず、オレ達はモンスターに追われながら駆け出していく。おそらく防衛行動は駆け込んだ先に居るであろう同じイバラシティ陣営と合流してからになるだろう。
そして、様々な事情や真実を告げられることを、この時のオレはまだ知らない。