日差しが暑い。
グミがリバーシ関所で商売(PK)に明け暮れているさなか、世間では夏の運動大会が開かれていた。
その流れに便乗してか、関所でも「柔道」の大会を催すようだ。
柔道とは一対一で組み合い、相手を倒したほうが勝つという格闘技である。
「こんな暑いなか、よく身体を動かす気になるわね。 でも、ひと儲けできるかも。」
不敵に笑うと、グミはスライムにある特訓をしはじめた──。

──大会当日。
対戦は一本勝負。 対戦相手に勝てば賞品、負ければ敗退というシンプルなルールだ。
グミはゆったりとした服を着ていた。 柔道着という競技用の服らしい。
しかし着慣れていないのか、もぞもぞしている。
対戦相手は、いかにも腕っぷしの強そうな女ファイターだ。
「正々堂々、戦いましょ。」
そういって組み合う。 体格差のある相手だが、グミは気にしていない。
試合が始まると、いきなり対戦相手の姿勢を崩すことに集中した。
しかし相手もなかなかの手練だ。 倒したと思った姿勢を、回復して復活させてくる。
相手の掴みに引っぱられ体力を消耗しながらも、しつこく崩しつづけ、なんとか姿勢を姿勢(戦闘不能)にすることができた。
「ここだー！」
グミが叫ぶ。
気合の雄叫び──に見せかけた合図だ。
すそからスライムが這いでると、姿勢を崩した対戦相手の足をとった。
「一本！ 勝者、グミ！」
審判が手をあげる。 と、いつの間にかスライムはいなくなっていた。
ゆったりとした柔道着はスライムを出し入れするために丁度いい。 まるで手品である。
「柔道とは柔──すなわちスライム道のことだったのよ！」

大会後。 グミは、さっそく賞品を受けとりにく。
丁寧に包装されていた賞品だが、その中身はたった一本の黒い帯であった。
「これって……おび？ おびだけ貰ってもなぁ。 こんなの店でも売れないじゃない。」
文句をいいながらも腹に巻くと、どことなく引き締まった気分になる。
いい汗を流したグミとスライムは、爽やかな気持ちで商売(PK)へと向かうのであった──。