まあ、魔物が持っていたわりには整っている。良し悪しで言えば素人目に見ても粗悪な品だ。
使い古しが多い(それだけ人様を襲っていたということでもある)中で、一番マシなものを選んだとしても、だ。

「なーにがいいんだかわかんないですが」
以前は、荷物が多くて足が遅くなりがちな大型取引や、他の商人と帯同しての商隊では、それこそ冒険者の類に護衛を頼んでいた。故に、こうして戦闘があったあとに装備だなんだを物色していたのも見たことはあった。
契約上は彼らの取り分だ。ゴミでも使えそうなゴミなら買い手がつくらしい。中には、奪った品の方が良いからと持ち替えてる者もいた。
野盗だゴブリンだが持っていた品など、エメからすれば好き好んで使いたくはないので、あれは趣味が悪いと思うのだが。


"後輩君"の案内と貿易許可の取り付けは金銭的な意味では持ち出しの方が多い。他の支部では知らないが、積極的にやるメンバーはあまりいない。
ちょっとでも経費の足しになれば上等と、冒険者の見よう見まねで、雑貨やこうした品を集めている……のだが。
「(案外、黒字で終わるかもしれないですねー。)」

前に立って戦ってくれるのは一応魔法使いの自分としては楽だ。護衛を雇わなくていいのだがら、いまの実力なら国内なら安く付くわけで、ちょっとぐらい戦利品を分けても良いぐらいだ。
そう思って渡したのは、まあ、おかしくはないはず。

野盗の鎧を自分で着だしたらちょっとどうしようかな、過った不安は見なかったことにした。