「自称勇者に『こんなところで再会するなんて運命の出会いだね。』とか言われたけど……あいつ、もしかして私のことが好きなんじゃ？ なんか着いてきてるし。」
誇張された記憶に悩まされながら、グミはテネルメントの店で装備を整えていた。
肝心な自称勇者の依頼はすっかり記憶から抜け落ちている。
「ムサい男は興味ないのに、これだから美人はつらいわ……はっ、いいこと思いついた！」
にやっと悪い笑みを浮かべ、ローグに目配せすると、意気揚々と店をあとにした。

「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい！ 今日の商品はこちら、スライム３匹セット！」
大通り。 テネルメントで一番、目立つこの場所でグミとスライムは実演販売を始めようとしている。
（パフォーマンスの最中、どさくさに紛れて勇者どもの持ち物を盗んでやるわ！）
「装備付き即戦力のスライムが一匹50000Lemのところ、３匹セットで140000Lem！ 10000Lemも安いよー！」
グミが(盗人)商魂たくましく声をあげていると、みるみるうちに野獣が集まってきて──。