No.899 暮れゆく窓辺INDEX >>
[設立者] ENo.899 燈子

コミュニティイラスト
城内の一郭。
一揆衆がさほど気にも留めずに過ぎてゆく、廊下に並んだ部屋のうちのひとつ。
忍び寄る闘争の気配に侵され切らぬ、けれども少しく、埃のにおいのする――

窓辺には、黄昏の光が差している。



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ロール用の専用コミュニティです。
恐れ入りますが、関係者以外の参加はご遠慮ください。

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参加者からのメッセージ

燈子(899) のか細い応答 >>
……解せない……?

小さく首を傾げながら、自分以外の二人の間に流れた微妙な空気に、僅かに肩を縮める。

あの……わたし、……まだ、死に、ません。
まだ……少なくとも、自分で、選んでは……
……今は、まだ……死ねない、から。
だから……

そこまで言って、言葉に詰まる。
オルガとヤールを交互に見て、やがて目を伏せた。



オルガ(1495) の乾いた低い声。 >>
右手の、白い指が、なにかをつまむような仕草をして、
すこし苛ついたように、虚空を擦る。
フーッと長く息を吐いて。
銃を下ろす。

医術ってのは、いくつもの肉体を、あるセオリーの型に入れるってことだ。
それぞれごとの個別性をひとまず捨象して、「この事例はこうすれば治った」ってな過去を参照し、それを現実の状況に応用して当てはめる。
簡単に言やあ、切れば血が出る、血が出すぎると死ぬ、だから傷口を塞ごうって筋になるわけだ。
だからそれは、例外に弱い。切って血が出ない人間がいたら、いきなり参照項がなくなるわけだな。

だから、食わなくてもいい、眠らなくてもいい人間に、
さて、どうしたらいいのかは……難しい。

話を聞くに、味覚がなくなっている根本的な原因はエンブリオだろう。
エンブリオがいるから食べなくてもよくなる、食べなくてもよくなるから味覚が失われる……だが、自然なプロセスと呼ぶには早すぎる。
エンブリオがあんたの体に、ま、あたりまえだが、よく作用してる面と、悪く作用してる面があるんだろうってことだな。
……

この世界で生きる以上、エンブリオとの共存は不可避だ。
だが、あまり自分の、生き物としての仕事を、エンブリオにやらせないほうがいい。
命の役割を明け渡しすぎると、あんたが生きているんだかエンブリオが生きているんだか、その境目がごっちゃになる。

不満げにヤールを見る。

死ぬ時はちょっとくらい痛い方がいいんだよ。
それに、あんたにぺろりとやられたんじゃあ、死んだんだか消えたんだかもわからないだろ……
ま、確かにこいつは、どっちかといや、死にたかないようだ。

燈子の方へ向き直り、
左手の袖をまくる。手を伸ばす。浄らかな光が、その手から糸のようにこぼれる。
心配するな。あんたの意志を聞きたかっただけだ。
死にたがってる人間を治すのはひどくむなしいから。
……目は、おそらく目玉の膜の雑菌感染だろう。
本来は食事と休息で体の治癒力を高めて治るのを祈るってところだが、難しい。
私の魔法ならすぐに癒やしてやる。
傷つく以前の視力までだが……。

味覚のほうは魔法じゃダメだ。
精神的なものかエンブリオによるものか、
ともかくあんたのここまで生きてきた生き方が、その味覚の消失に反映されている。
肉体的な外傷じゃない。
そいつを消すことはできない。

それは……もし解決したいなら、あんたの周りにいる、あたしより親しい人間と、
謎を解くように、自分を掘り下げて、その原因を探ることになるだろう。
あたしに言えるのは、まあ、要らなくても飯は食ったほうがいいってことくらいだな。

味がわからなくたって、目が見えなくたって、生きちゃいける。
幸福になることもできる。
同じように、味がわかったって、目が見えたって、
死ぬことも、不幸になることもありうる。
自分が求めているものはなにか。
そのために得たいものはなにか。
あんたはもう少し、自分の欲望ってものに、
居場所を与えてやったほうがいい。……

ヤール(1496) の応答 >>
……そう解せないことでもないだろう。
私がお前たちについて、あの庭を出てきたことと、同じだよ。
そうすることが必要だったから、したまでのこと。

それにいまはもう、彼女も娘のひとりだからね。

 彼の座る、何がしかの重たく軋む音。
 過重に耐えかねるかのように。

――私はそのように見做される限り、そのように応答するだろう。

それが”どのようなもの”でも。



参加キャラクター : 3名