船に乗ることは好きだ　ゆっくりと動き出し、変わらない風景を眺めるのが好きだから
それが空だったら、更に良いのだが…　そんなことを思いながら、船は港町に到着した
ここはトスナ大陸　ここに来るのは3度目か　最初は冒険のために、いや…冒険という程の歳ではないかもしれないな
年の話は置いておこう　今では観光目的で、散歩をしているついでに腕が鈍らないように、放浪しているのだ
カモメを数えながら他の旅人の往来を見る　45匹目、46匹目、47匹…　と、ふと空に向けた視点を、周りに注目すると、見覚えのある顔が

「おや　いつの日か闘技場で私をしこたま殴ってきた…名前はトトだったか」

覚えている　2度目の魔王討伐後の闘技大会の時に、初戦で当たったのが彼女だ

「おぉ！？あんたは......闘技大会で出会ったフローズンちゃんじゃないか？」
「久しぶりだねぇ！！！」

「そうか、ここで出会うのもまた縁かもしれないな」

一度視線を空に向ける　カモメの群れはどこかに行ってしまったのか、旅人の集まりもほとんど見えなくなってしまった

「そういや、あんたはどうして平須の地に来たんだ？私は修行しにここに来たんだが」

「ん？平須は私がここに観光する時は毎回来てるんだ」

ここは技術の国　機械文明が進んでいたり…和風というか、他の大陸に比べると、個性豊かな人が多い気がしている
個性と言ったら、隣にいる彼女も相当な物だが　かつてはこんな衣装も着たりしたな　そんなことを思うと、少し彼女のことが気になってくる

「ああ、修行目的なら、案内しようか？」

旅はいつも一人でしていた　だが、最初にこの大陸に渡った際に、一時的に協力した人達のことを忘れたことはない
それに、他の場所でも取引があったりするし。そう考えると、縁は大事なものだ

「お、それなら案内をお願いしちゃおっか！ここから旅を始めたことが無くてなぁ。助かるぜ」

「それなら一緒に行こうか」

同意も得られたことだし、今回の旅は少し賑やかになりそうだ
ああ、一つ言いそびれたことがあった

「この大陸では…私はすごく弱いぞ？」

−ここはトスナ大陸、彼女の3度目の旅が始まる