ここはトスナ大陸の西にある平須国。
その南端にある港町、応礁。

故郷を出て一年くらいになります。
あてもなく流れているうちに、こんな所まで来てしまいました。

私の中、私の奥から私をつき動かし続ける声なき声。
その根源と、こうもせき立てられる理由を知りたくて、旅を始めたんでした。
生き物は――私は魔族らしいけれど、きっと人間も――自分の深奥をずっとずっと探ったら、
その一番奥で「自分ではない」領域を見つけるのです。
あまりにも暗くて深くて、広漠な。

私は、そこにあるものを知りたい。
心の中に光はあてられないけれど、世の中にもし同じものがあるなら、照らし出すことができます。

この街から北へずっと行くと、『留魔の丘』という場所があるそうです。
魔が留まる丘。
まずは、そこへ行ってみようと思います。