オレは徐々にこの世界にも“適応”していく。
しかし現れる敵もまた、プラインガルドに近づくたびに着実に強くなっていくのを感じる。オレは、切り札を切ることにした。
高圧術式（ハイボルテージ）。魔力消費量の増大と引き換えに、魔法の威力を増大させる術式だ。
扱いが難しいが、とても強力だ。2頭いたオークの内の1頭は、オレの雷に打たれ消し炭になった。
そこまでは、よかった。
「おいハルッ！　前に出過ぎだッ！」

結論を言えば。ハルが倒れちまった。
オレたちがうっかり隊列を乱した隙を、ホブゴブリンどもに集中放火されてしまったのだ。
オレたちは可能な限りの応急手当をした後、ハルをすぐそこにあった次の町――ロフテネクの宿に運び込んだ。
ゼイギンもハルほどじゃねえけど、ボロボロにやられた。

どうして、みんなが先なんだ。どうして、オレは置いてかれるんだ。
傷つくのは、オレ一人で十分なのに。