天は猫たちの栄光を語り告げ、星空は御手のわざを告げ知らせる（詩歌集19-1）


学舎でホコリをかぶってた「勇者起動計画」
昔は魔王を倒すべく必死に作られていたのだろう。学舎の優秀な生徒に、強大なチカラが取り込むことのできる『容量』と、世に助けられる『人望』を。
副作用は、対象の知能の低年齢化、愛嬌増
祢子は受け入れた。友人を救うために。


自分という人間の「メモリ」を削減して、隙間をつくる。
その隙間に、遥か彼方の宇宙から逃げてきた宇宙猫たちを住まわせるために。


呪いの論理は単純で、「魔王を目指し進む」「魔王がたおされたときに解除される」。【ABYSS GAZE】はその力と、今までの旅から、この地には地底犬の影響下になく、宇宙猫が安全にすごせるであろうことを調べきった。であるから、あとやるべきことは祢子を……ウチュー☆ネコを、その呪いから解放するだけだった。であるから【Mystic】づてに魔王を倒すまでの道行きを、ネコを守ることのできる人材を求めたのだった。ネコを守るために得た力で組織に協力すると約して。


──魔王が倒れた今、もう祢子はかつての弱い少女ではないし、深夜もかつての力なき少年ではなく、


宇宙猫もかつての力なき逃亡者ではなかった。


「魔法が、とけたみたいだ」


くるりと回る。そこにいるのは幼い猫耳の少女ではなく


カラフルさはそのままの、猫耳の女学生で


「祢子！」


深淵が大きく開く。驚いた【ABYSS GAZE】が、飛び出して


手を、つかんだ。


10年前、つかむことのできなかった手を。
手を握って、祢子は言う。もう片方の手を、名のない男にのばして、


「あたしさ、ずっといいたかったんだ」
「あびー　のーふぁ」
「あたしをつれてってよ」


【SPACE CAT】はそう言って笑った。つまり？ネコと和解せよ。めでたし、めでたし、である。