トスナ大陸の人魔大戦は、突如として終わりを告げた。
国家間、種族間、次元間の戦争。まあ広い目で見りゃ“よくある話”だ。
この後オレたち冒険者ができることがあるなら、せいぜい人界と魔界の橋渡しをする使者としてこの大陸を駆け回るくらいだろう。
戦争があった時代の話ってのは口伝だとか、書物だとか、物語とかに記録されていくけど、時間が経っちまえばどんどん面白おかしく脚色されて、当時のことなんかほとんど忘れられちまう。

流れた血は決して少なくはないけれど、ともかく。
人界にも、魔界にも、こうして平和が戻った。

……オレの故郷の顛末を考えりゃ、なんとも呑気で穏やかな話だな。
けれどこうして救われる場所が、たまにはあってもいいと思う。
何しろ、ハルの家族の命は助かったんだ。大儲けじゃねえか。