オレが学校から卒業して、ドラグーンライダーの訓練校に通い、3年が経とうとした15歳の夏の話だ。
夏とはいっても、北緯に近いところだから涼しいし、他と比べりゃ日も短い。

まあそんなことは置いておいてだ。
あれは飛行訓練という、オレの一番楽しみな時間に起きた。
襲撃の警報が鳴り響いたのだ。生まれて初めて聞く音だった。
たちまち駐屯していたライダーたちが次々と出撃する。一方、オレたち訓練生には退避しろ、という命令が出された。
だがオレはみんなの制止を振り切って、訓練機体に乗ったまま、出撃したライダーのあとをつけて飛ぶ。
だって、だってあそこには！
　シエロアーク
オレの住む町があるというのに！

ようやく町にたどり着いたころには、すでに何もかもが手遅れだった。
ドラグーンの疑似感覚機能で伝わる、血の匂いと炎上する建物の熱が、当時未熟だったオレの心を恐怖で凍てつかせる。
それでも。誰か、せめてトロバだけでも生き延びてくれという思いで、自分の家やよく訪れていた場所を探し回った。

いつもの集合場所として使っていた、時計塔だった瓦礫の山を通り過ぎようとしたとき、咳き込む音を疑似聴覚が逃さなかった。
広がり切った血の染み。生きていたところで、下の人間はもう助からないというのに、何かに駆られたように機体を動かし、瓦礫を取り除く。
……オレが見たのは、瀕死の双子の兄、トロバだった。

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長い長い昔話はこの辺でやめだ。
オレたちは今魔王城……すなわち敵陣のド真ん中で、たったの3人で戦っている。
オレだけが生き残ってたまるか。ハルとゼイギンを先に死なせてたまるか。その思いだけでどうにか立っているようなものだ。
何もかもが限界に達しようとしたその時だった。
ハルが、自分の師に向かって投げつけた剣。
それが、オレの視界を釘付けにした。