「みなさんの、大きくなった時の夢を教えてくださいね」
……もうずっとずっと遠い昔の記憶にある、学校の先生の声。

「カヴネルちゃんは、将来何になりたいのかな？」
小さいオレが出す答えはすでに決まっていた。
「ドラグーンライダーに、なりたいでーす！！」
あまりにも大胆な答え。あまりにも堂々とした態度。たちまちどよめく教室。

「ドラグーンに乗って、空をビュンビューンって飛んで、この町に襲い掛かってくる敵を、全部ブッ飛ばしますッ！」
ふんす、と小さいオレは満足げに答え終えていた。

ドラグーンライダー。オレの故郷では一番の憧れの的で、何よりも恐れられてもいた。
オレの故郷における最強の生物――竜を象った、圧倒的で絶対的な兵器。
それを操れる存在というだけで、当然ながら強烈な注目を集めることになる。
オレの育ちの故郷、鉱山都市シエロアークでは。当時5年間に渡って新たなドラグーンライダーを輩出していない。
珍しいことではない。ひとりで機械の竜の血液、心臓、頭脳。そのすべてに値する人間など、そうそう生まれてはこない。
この世の誰よりもと叫びたいほどの空への憧れ、この街の誰よりも並外れた魔力を持っていたという事実が、自分ならできるという確固たる自信を後押しした。
何より、この身に代えてでも。シエロアークを、トロバを守るという覚悟があった。
学校を卒業して、ドラグーンライダーの訓練所に通うことになってから。
トロバにはなかなか会えなくて寂しかったし、訓練は辛かったけど……オレの未来は限りない希望で満ちていた。

……例の、あの日までは。