「ホントはね」

「いきなりどーしたんですかー？」

幽霊の問いには答えず、騎士は3歩先を歩き続ける。
彼女は振り返らず、その表情は良くわからないままだ。

「魔界、もうちょっとじっくり調べてみたいのよ」
「ここの生態系って、独特でしょ」

「はー。たしかに、ふしぎな感じのいきものばかりですね〜」

「だから……世界のあちこちを旅しても見つからなかった植物が……
　万病に効くとされる伝説の果実、アムブロシアなんてものも……
　見つかるかも、しれないって」

彼女は振り返らず、その表情は良くわからないままだ。

「探せばいいんじゃないですか〜？」

「バカね。魔族からしてみれば私たちは侵入者、おとなしく調査なんてさせてくれないのよ」
「それにね」
「伝説なんて、しょせん伝説……都合よく脚色されている場合がほとんど」
「世界を旅してきたからこそ……可能性は薄いって、分かってるのよ」

「は〜、そーんなものなんですかねー」
「そうやって、じぶんをなっとくさせてるだけではー」

「……」

彼女は振り返らず、その表情は良くわからないままだ。