掘削機の唸る音。岩石が抉れ、崩れる音。
それらの合唱が、まだ幼かった頃のオレの聴覚を満たす。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　エレメントクリスタル
鉱山都市、シエロアーク。元素結晶が採掘されていた鉱山は、本来は子どもが行けるような場所ではないのだが。昔はよくあそこへ小遣いを稼ぎに、足しげく通ったものだ。
稼ぐとは言っても『特等席』に座って、掘削機の振動に揺られているだけでいい。たったそれだけで、鉱山に働く人々に貢献できる。
というのも。
それが許されていたのは、特別な理由があったからだ。

竜の末裔である生物が持つ生体エネルギー。オレの生まれ育った世界の住民は、魔力と呼んでいる。
魔法の発生装置である魔導機に魔力を込め、自然界のエレメントに干渉するだけで、例えばつるはしがロクに刺さらないような硬い岩盤ですら、熱を加えられたバターのように切断できるのだ。
オレは、この魔力の生成量が並外れて多かった。
だからこそ、積極的に自分の才能を生かして町の暮らしをより良くしようと考えていた。

シエロアークは平和だったけど、町の外では機械仕掛けの竜、ドラグーンによる武力衝突が常日頃起きていたし、いつ自分たちが戦渦に巻き込まれてもおかしくなかった。
ドラグーンは強大無比な力。裏を返せばそれさえあれば、どんな脅威だろうと町を守れる。
魔力量などの適性は十分。だから、ドラグーンライダーへの道を進んだことも。
12歳になったオレにとっては、当然の選択だった。

――ドラグーンの力は、手に入った。

――シエロアークを守ることは、できなかった。

――何もかもが、手遅れだった。