2回の記録
魔界とか魔王とかの歴史というものにはウンザリする。
テキトーにしか勉強してないけど、要するに「魔王が勇者に倒されました!めでたしめでたし!」でしょ?
それからわたしたちのいる魔界とトスナ大陸は友好関係を築きました、と。
で、なんでまたトスナ大陸攻めようとしてるの?またほら、よくわからないけどどうせ科学の力で敗北して終わりでしょ?
だったら仲良くしようよ!?ってわたし思うんだけど……。
それにしても科学の力の勇者……今度はガ〇ダム的なヤツでも魔界に来るんじゃないの?来たら絶対ヤバいって!
来たら友好の証に魔王城の前に等身大の像でも作って……
「それで、根拠はあるんですか?ハルシオン様?」
「はいはい、ありませんよー、イーケプラ"先生"」
侍女(というか教育係)のイーケプラがコーヒーを持ってきた。わたし紅茶派なんだけど。
「たとえガン〇ムのような勇者が魔界に来ても、我々は勝たねばなりません。その為には、ハルシオン様にももう少し勉強して頂かねばなりません」
「えー、めんどくさい。それとコーヒー苦いからミルクとお砂糖あと2つ持ってきて」
わたしは勉強が大嫌いだ。魔王になった暁には彼氏を作って結婚してママでも魔王を続けてやる。
だから真面目なイーケプラはこう、毎日ガミガミうるさい。
「ハルシオン様?」
イーケプラは角ばったメガネをくいっと上げて、わたしをきりっと睨みつける。
ああ、これ絶対彼女怒ってる。
わたしは机に向かおうと、教科書とノートを机の上に広げると。
「……話は最後まで聞くこと。
しかし、ハルシオン様が将来魔王になるにあたって、机の上だけではわからないことも多いでしょう。
そこで、貴女にはトスナ大陸に留学して頂くことにしました。
トスナ大陸の各地を巡り、人間と関わり、多くのことを学んできなさい」
……え?
旅できるの?
それも、いつもガミガミうるさいイーケプラなしで?
やったーーーーー!!!!!
「出立は明日の早朝です。それまでに旅支度をしておくこと。わかりましたね?」
「はい!わかりました!!!!!」
そういうわけで、わたしの旅はここから始まった。
いつかわたしが、立派な魔王になるための冒険が。