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完全に不意を突かれた。今まで剣と剣のぶつかり合いの中で生きていた彼は、獲物を持った際の太刀筋や流れ方、気の動向には非常に敏感である。ーしかし、それ故に獲物を使わず攻撃に転じる「彼」のアクションは完全に想定外であり、レグル自身が未だに見習いであるという事がありありと現れることとなってしまった。

つまるところ、レグルには彼の拳を避けることは出来ないはずだったのだ。しかし刹那の思考に亀裂を入れるように、ある一つのイメージがレグルの脳に突き刺さる。それは、「まるでこれから起こる事が何であるか」を、切り取り映したようなものでーー

ちり、と肌を掠める音が耳につく。引かれた腕に追従、更に奥へと体を潜り込ませ、ラッシュの頭であろう打撃を既のところで躱す。だがその動きは明らかに不自然であり、闘いの経験がある者であれば、あれは避けられる道理がないコンボであったと確信しているだろう。レグル自身、今の自分に何が起こったのか理解出来ていない表情を浮かべている。

ふと彼の「目」に視線を移せば、よく見ると薄く光るルーンのような文字列が、目の周りに浮かび上がろうとしているのが分かるだろう。