「何をしている、キムラヌート、マルクト」
「……」
「……」
「この塔はほぼ未開拓の領域だ。あの奇妙な幽霊とて出ても何ら不思議ではない。数で負けたことを悔やむか？」
「否定はせん。わたしやコイツはともかく、無辜の民を傷つけたことに責任はある」
「殊勝な心掛けだ」
「大猩猩有獣,存在的考慮？」
「わたしは貴様と違い、人の上に立つ王だ。人も獣も変わりはせん」
「滑稽」
「邪竜には分からぬ感覚だろう。人を滅ぼすだけの悪鬼羅刹風情が」
「煽るな。貴様もだマルクト」
「……不起」
「ともかくマルクトは治療に専念しろ。あとはキムラヌート、貴様が前線に立て」
「不義……否、了的」

なぜ、ワタシはこんなものの命令を受けているのだろう。
なぜ、ワタシはこんな些事を鬱陶しがらないのだろう。
いったいなぜ――