辰巳
「(ふらり、と物陰から現れる――この男はいつでも物陰から現れる事を是とでもしているのだろうか――ひょろりとした青年の姿。そのままその場を立ち去るかと思われたが、ふと足を止めて――犬のように、その場の匂いをかぎ始める)
……僕の勘違いでなければ……この気配は、猫だ!
(きっ、と眼光を鋭くして辺りを見回し――程なく、猫の耳に猫の尻尾の――幼女という表現を使っても誰にも怒られなさそうな年頃の娘を見つける。理性をかなぐり捨てたい誘惑にとらわれるがそこは一旦堪え――ふと、違和感に気づく)
あれ?ただの猫じゃあないのか。神様……荒魂、それも崇り神に近い感じ。いずれにせよ他所の神様だなあ……
(へえ、と興味深げに声を漏らしながら無意識のうちに一歩、二歩と間合いを詰める。そのままギリギリまで間合いを詰めたかと思うとじっと顔を――どう贔屓目に見ても不躾に――覗き込んだ)」 |