黒い男
「「……此度は危うい戦だった。勝ち進んだようだが」 再生効果を秘めた外套で手傷を癒しながら、テーブルに頬杖をつく。 「――戦とは外交手段だ。そうだな、武力を行使して牽制したり、相手国の資源をえたりするためにある。別に悪いことではない。被害が大きすぎたりいつまでも続いたりすることが問題なのだ」 ため息を交えながら呟く。 「いずれは傭兵もいらなくなるそうだが戦はなくなるまい。戦とはたとえば私とラヴィーナが言い争うようなものだ。話し合いで済むのが穏便な外交だが、決裂した場合はそうはいかないだろう。力を以って何かすることが悪いことではないらしい」 額に手を当てながら何かを思い出したようだ。 「そういえば、何処かの地で出会った娘が似たようなことを言っていた覚えがある。相対するのも時には必要だった、と」」 |