Diary
気付けばアタシはアタシじゃなかった。
背にあったはずの翼は無いわ、辺りに居るのはやけに統一性の無い連中だわ。
一体何がどうなっているのか、皆目検討もつかない。
黒い帽子の女が手短にした説明を
「はい、そうですか」
と、も言わず。
「その使命を全うします」
と、忠誠も誓わず。
「何故自分なのだ」
と、嘆きもせず。
軽く聞き流した。
いきなり目の前に現れた得体の知れない奴の話を、まともに聞くほどアタシはお人よしではない。
ただ
―自分が魂だけの存在で
この世界の誰かを媒体として憑依して存在する―
コンファインという話だけは、気になって聞いていた。
つまり、アタシはこの世界の誰かに憑依し続ける事でこの世界にアタシとして存在できる。
裏を返せば
アタシは魂というだけの存在。
媒体がケガをしたとしても、それこそ腕が引きちぎられようが
新しい身体に憑依すれば問題はない。
永遠に闘うことが出来るのだ。
媒体は元の身体に比べれば、ヤワで脆いかもしれない。
だが、死ぬ事を恐れず闘えるのだ。
こんなにも、最高に楽しく都合の良いことは無い。
蠢く黒髪で隠れた表情から、僅かに覗く口元が思わずニィっと歪んだ。