Diary
朱い。
天も地も全てが朱い。
殺し合いをする者達の瞳も朱い。
全てが朱い島。
最後に残っているのは、浄化の焔、そして長い黒髪の人影の記憶だった。
気がつくと、俺のそれ以外の記憶は、真っ白になっていた。
それどころか、身体も、ない。
どういう身体だったのか思い出せもしない。
魂片だけになって途方に暮れていた俺に、その声は話しかけてきた。
長々とした、この状況下の解説。話の終わりに、声はこう聞いてきた。
「今なら引き返せるけど、どうする?」
ふざけている。帰るために戦うってのに、何がどうする、だ。
どうせ帰ると言ったところで、『やっぱり無理でした!』とか明るく言われるのは目に見えている。
大分神経を逆撫でされたものの、ぶん殴る身体はない。言うとおりにするしかなかった。
……端的に言うと、すんげぇムカついた。
こうなったら、何としても帰ってやる。気になりすぎることはいっぱいある。
焔の記憶。
長い黒髪の人影―――多分、女の子だ。
元の身体。
行き着く先。
進むしかない。