キースタワー
ルチルは包帯でぐるぐるまきの獣人に手招きされるまま、小部屋へと入っていった。
「まぁまぁ、そう警戒せんと、適当にそこら辺座ってぇな」
男はすでに荒らされた小部屋の家具を適当に蹴飛ばし、場所を作るとどっかと座る。
その拍子に、顔に巻かれた包帯の一部がほどけ、そこからえぐれた肉と白骨が見える。
特に慌てた様子も無く包帯を巻きなおすと、男は話を続ける。
「いやー、ワイが死んでからどんくらい経ったんかは知らんねんけど。
気持ちよー死んどったら突然たたき起こされてな、こんなナリで生きかえさせ…いやアンデッドやから死んだままは死んだままやねんけど。
どーも、この塔自体がこの世のモンや無いらしくてな。
その影響で、ワイみたいに自我を残したままアンデッドになったりとかしとるみたいやねん。
自我が残ったままアンデッドなんかなるモンやないね、あんたらがものすごく美味そうに見えるんやけど食べようって気にならへん。
ま、それはそうと。
折角この世に戻ってきたんやから……そこら辺でかき集めてきたガラクタやけど、何か買わへんか?」
男は喋りながら並べていた『商品』を指してニッコリ笑った。
本人は爽やかに笑ったつもりらしいが、不気味さが増しただけだったとはとても言えなかった。