木製の簡素な組み立てのテーブルセット。薄茶のテーブルの上には藍色のテーブルクロスが斜めに敷かれ、花畑で適当に摘んできたとおぼしき草花はそう大きくもないバスケットに盛られ、花瓶代わりと真ん中に。
木製の皿にはビスケット、煎餅、月餅やこんにゃくゼリーなど、菓子類が一貫性なく溢れかえっている。真横にはソーサーに伏せられた、白地に赤いラインが一本だけ描かれたシンプルなティーカップ。スティックシュガーとティースプーンが添えられている。
ポットにはまだ布のカバーが被せられたまま。砂時計が示すおおよその時間はのこり1分ほど。
「西は赤、東は黒。境界線の滲む頃。昼に動いていたヒトたちはそろそろ静かになって、夜を好むヒトたちがごそごそと動き出す。ちょっとした空白の時間。……静かにお茶を飲むのにこれ以上の時間はないと思うんだけどねェ。 夜は静か? 何の冗談だい、昼より夜が好きなヒトがどれだけ居ると思ってる――僕も含めてね」
日はすでに傾いて、茜色に黒く影が落ちる。
ぱちんと、ランタンを模した電気ランプの電源を鳴らす。 仄かに周囲が照らされるのは同時、砂時計が動きを止めるのも同時。
「思うにお茶会ってのはこっそりやるモンだ。趣味の世界は堂々とひけらかすモンじゃない……同意いただけるならキミも一杯どうかな? 丁度新しい紅茶を買ってきたんだ。ホワイトチョコとかアプリコットははお好きかな。まあこの季節にはそれなりに合うフレーバードティー。 あと何かお茶に合うものがあれば分けてもらえるとこれ幸い。まあ、合わなくても分けてもらえれば嬉しいね」
カバーを取り外して、カップを返し、揃いのポットからカップに紅茶を注ぐ。フレーバードティーの甘ったるい香りがふわと漂う。たっぷりのミルクと砂糖を入れてかき混ぜる、カップとスプーンがちりちりと鈴の音を立てる。
ほんの少し口にして、満足そうに笑って飲みかけのカップを差し出した。
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