フィリー 37 -22 リード

フィリーは思いの外器用なんだよな。
無骨な武器とチェス駒の扱いはまた
違うもののような気もするが……

トルラルールのかつての戦争は、
「紅茶にミルクを先に入れるか、後に入れるか」
という口論が、きっかけとなったという説がある

もしそれが真実だったとしたら
バカバカしい話だな……。

ニャッニャッ　ニャー

ムイッムイッムイッムイッムイッムイッ

ニャッ

ﾎﾟｽｯﾎﾟｽｯﾎﾟｽｯ……

ﾎﾟｽｯﾎﾟｽｯﾎﾟｽｯ……

そ、そんなことないですよっ！

ただ、なんだろう、アトラさんとねこちゃんが一緒にいるのって、なんかこう、似合ってるなっていうか、案外しっくりくるなっていうか……？

あっ！

雨降ってきました、洗濯物取り込んできます！

……めちゃくちゃ上達してるのでは？

昨日今日でどうにかできる問題じゃないぞ……
なんか数週間経ったような間隔あるし……
こ、これは一体……

「君がアトラくんだねッッ」
　チェスに興じていた二人の横を通り過ぎ、
アトラの元へと大股に歩み寄る。
「人相書などよりずっと――そして私の想像していた通り！」
　ほとんど無理やりにその手を取り、腰をかがめて顔を覗き込む。
サングラスの奥の瞳は見えない。
「……美しい！」
「いや、凛々しいと言うべきかなッッ！誇り高い、正義の意思を感じるッッ」

「この家の、質素な内装にも気品がある！」
「猫もかわいい！！」

「おっと……挨拶が遅れてしまった。少々興奮してしまった」
「お初にお目にかかる――……いやどこかで会ったかな？」
「防具を作ってもらったような――」

「たぶん人違いだな。初めまして。私はヨハネ！」
「そして《この世界》の混乱を憂う一人！」
「秩序！君と同様、それを強く求める者だッッ！」

「心無き統治者によって秩序が失われたメルンテーゼ！」
「現状の一揆勢は烏合の集まりであり、この混乱を収めることは出来まい！」
「漁夫財団のような、己の利益しか追求しない者を招く始末だ」

「トルラルール！」
「良い所だった――世界港で六時間ほど足止めされた挙句」
「そこから先には行けず仕舞いだったが」
「それでも素晴らしい世界だと一瞬でわかった」

「秩序の世界！その騎士たる君以外に、ここに正義と平和をもたらせる者はおるまい！」

「6:59なので色々端折る！！」
「騎士アトラ！あなたと秩序に忠誠を誓おう！私を騎士団の末席に加えてくれたまえッ！」

約束は守るよ…可能な限り

ん？ああ、失礼。色々誤解してた
そうか、律法騎士なのはアトラだけか

エモーションを、込める…？
切り離すんじゃなくて、か？

いや、違う。そんな世界から来たわけじゃない
君らが律法世界の騎士だと思って、合わせようとしたんだ
まあ、間違っていたんだが

僕の手番か
エモーション…感情、情緒…

お〜おるおる、フィリーちゃんや〜。あとは初日の稽古で会うた人らやな〜……ってねこちゃんこんなとこにもおるんか

ん〜フィリーちゃんの様子が気になってきてみたものの、なんか入りにくい雰囲気やで……もう帰ろかな