［基本］OK.　［戦闘］OK.　［スキル］OK.　

　ベースキャンプ。
　他の三人が寝静まったあと、ハティは、空を眺めていた。
　落ち着いてハザマの空を眺めるのは初めてのように思う。思わず天を仰いだことは幾度もあったが――
　
　突然。
　手首に撒いたスタークラウンから雑音が流れ出した。それは段々と大きくなり……突如、止まった。

「あ、あぁ……」

　その後から、声が、聞こえる。

「遅れて、しまったわ。今どのあたりかしら……？」

　スタークラウンの制御AI、リアの声だ。こちらに来てからは聞いていなかったのだが……

「終わりだよ。全部終わった。こちらの負けだ」
「あら、それは残念……もう少し早く起きられたら、なにか手伝えたのかもしれないのだけれど」

　少々白々しさを感じる。おそらくもっと早く目覚めたところで何かをしたわけでもないのだろうが。

「わたしに前の世界について『思い出させ』た時点でお前の目的は果たしたんだろう。たしかに同じ行動をした――ナレハテを二回殺した――時点で、わたしは明晰夢になった」
「なら、あなた自身が何者であるかは理解できたわけね？」
「ああ、そうだ。わたしはハティの《夢の司》。夢から目覚めたら消えてしまう記憶を司る存在。ならばこの世界においては現実のわたしでは到底振るえない異能であっても容易に使いこなせる――」
「そう、正解。私が長時間の活動不能になるのと引き換えに剪定世界から記憶を持ち越させる価値はあった」
「だが負けた」

　悔しそうにかぶりを振るハティ。

「勝てなかったのだ。勝ちたいと思ってしまったのに。流され続けてその果てに目標を見つけたわたしがだよ、ここに来て強く願ってしまったことなのに……」
「なら、次は勝ちなさい」
「次……？」
「ワールドスワップは幾度でも起こるのでしょう。ならば次も参加しなさい。アンジニティとなるのであれば、嫌でも関わり合いになるわ」
「そうか……そうだな」

　小さな、決意とともに。
　ふと、眠っている仲間たちの顔を見る。彼女たちもアンジニティに行くことになるのだろうか。

「結果の反映は120日後になるんだそうだ」
「少し、先ね」
「現実のわたしはとっくに家に帰っているだろうな」
「イバラシティから出ても『あなた』は逃れられるわけじゃないわ」
「わかってる」

　小さく、息を吐いた。

「次は、必ず――」

　息と共に、小さな決意は虚空に溶けた。