［基本］OK.　［戦闘］OK.　［スキル］OK.　

　戦争は、陣営の勝利で終わった。
　だが、私は戦い続ける。そこに戦争がある限り。勝利を導く為に。

　歩き続ける。
　硝煙を何度も嗅いで。

　歩き続ける。
　果てない行く末に“前任の黒の騎士”を見付けるため。

　歩き続ける。貰ったタバコに火を着けて。
　歩き続ける。最後の一本だけ、惜しくて吸えなくて。

　身体が崩れて、徐々に黒地に溶け込んでいく。
　不死身の身体であっても、意識が薄れていくのだけは逃れられないようだ。

　一体どれくらい歩き続けたのだろうか。
　足元を跳ねていた兵器は既に溶けきって、自分の中に入っている気すらする。

　ふと、呼ばれた気がした。
　そこに何も無いはずなのに剣を掲げる。




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　まばたきだ。
　まばたきをしただけで、暗い世界から一瞬で色のある世界に帰る。

　ぼんやりと白空を眺めて、赤い色素の雲が流れていく。
　今日も暑くなるな。

「ナンディナ少将！ はーっ……此処に居たんですか……」
「あぁ、コルヒクム大尉。ちょうど良かった、タバコはあるか？」
「あのですねぇ……俺がなんで貴方を呼びに来たのか分かってますかぁ！？」

　金髪の、太い眉毛が八の字に曲がる。
　貰えないのか……とつられるように私も困った顔をすると、バストネス･コルヒクムは諦めた顔をしてフィルターのないタバコを一つくれた。

「で、数日前に発生した色変術の解析結果……」
　バストネスが話し始めようとするが、私はタバコの火をくれというように催促する。
　無言でその様子を眺めたバストネスだが、ため息を吐きながら指を鳴らして小さな炎の色変術でタバコから煙が立つ。

「で！ 数日前に発生した！色変術なんですけど！！」
「スカーレットではなくバヂターの方角からだったな。あの国が攻め入ってくる事なんて考えもしなかったがな……」
「……はい。現地入りした調査団曰く、人為的であることは間違いないと。
　しかし、発生した地点では……“黒地”が見える程抉れていたと」
「地上で、かつ黒地の限界地点ではなく……だな？」
「そうです。まるで、その場所が崩落したように」

　煙を吸って、吐く。

「そして、青色個体の少年が同じくその場所を調べてくれたとの事で」
　バストネスは続けるも、何処か落ち着かない様子だった。

「……マラカイト、と名乗っていたと」
「青色個体であるに緑の鮮やかな孔雀石を名乗るか。変な少年だな」
「えぇ。本当……名付け方は遺伝でもするんですかね。透明なのに黒いテクタイトって付けたり、白と黒の半々の黒白補援個体にクォーツって名付けたり……親の顔が見てみたいものです」

　私は笑って煙を吸う。
「君のかつての隊員は行方不明のままだったな。しかし、それは2年前の話だ。子供が出来る年月としては早すぎる」
「まぁ……そうですね」
「気になるなら、君が調べてくると良い。丁度調査団も色変術に詳しい人材を欲してるはずだ」
「……いいん、ですか？」

　高い背を縮こませ、バストネスは言う。

「“災厄”を失ったスカーレットはこの2年で勢力を失っている。数ヵ月前に発生したのも小規模な反抗で、今のところ大きく攻め行ってくる兆しは見えない。行くなら今、手短に済ませてくるんだ」
　私の言葉に大きく頭を下げたバストネスは、準備しますと言ってその場を去った。

　まばたきをする。身体が溶けるような感触はしない。
　目を瞑る。黒い夢を思い出せそうにない。

　永劫回帰。死んで、運命が重なれば私と同じく物が出来上がる。
　それは私と言えるだろうか。いや、きっと別物なのかもしれない。

　私は死んだ。旅の先で力尽きて、黒地に還った。
　私は生きた。そして、“黒の騎士”が“無限光”によって消されるのを見た。

　口元に迫っていた火に気付いて、タバコを落とす。
　火を消してバストネスから貰った携帯灰皿に入れようとた際、くしゃくしゃになった紙ケースの中に一本だけタバコを見付ける。

　銘柄は分からない。何故持ってたのか思い出せない。
　きっと、誰かから貰って火を着けて貰えなく、仕方なく仕舞ったのだろう。

「乾燥してしまってないといいが」
　そう言って一本だけのタバコをしまう。どのみち火種がないから吸えもしない。

特に何もしませんでした。