［基本］OK.　［戦闘］OK.　［スキル］OK.　

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　――アンジニティの勝利のようで。

　響いたその声で、私達は足を止めた。異質な繭も立ち止まる様に動きを止めた。
　そうか……果たせなかったか。と心の中で悔やむ事は無い。
　もう私達は、どんな結末をも受け入れる為に進み続けていたから。
　だが、それに抗うかどうかの選択肢は残っている。
　敗北を受け入れた上で、まだ先にある希望を手繰り寄せる選択肢はあるはずだ。

「……こっからは私に任せてくれないか。お前達の進む道はあっちだ」

　指差す先の、そのもっと向こう側。終末色の空の下、しかしそこに黎明の光が集っている。
　我ら響奏の世界の住人達が集った、希望の光だ。諦めない者達が集う光明。
　彼処に向かうべきなのだ。芥川響と、シュナイダー・G・ゴリヴァーは。
　少なくとも彼らは私達と同じ様に、掃き溜めのゴミの様な世界で否定され続けるべきではない――そう思った。

「北条……正子さん。それは出来ないよ」

「ええ。我々の道はまだ阻まれていません。例え、世界の理から"否定"されようとも。
　"スタンディング・オールオーバー"――我々の"勇"はまだ、潰えてはいないでしょう？」

　そうか――そう。そうだった……お前達は、そういうヤツだ。
　あの街で会った時から、この境界線上の世界で手を組んだ時から。
　我々は常に運命を響き合わせ、共に歩み、そしてこの結末の上に並び立っている。

　ならば、彼らの選択もまた運命――なのだろう。

「いいのか？　あっちに行けばまだ何とかなるかもしれないぜ」

「何とかなるかもしれないし、ならないかもしれない」

「だとすれば"こちら"を選んで『何とかしてみせる』のが、我々の道理ではないでしょうか」

「……へっ、まったく……男の子ってヤツは」

　そうだよな、いつだって私達はそうしてきた。
　阻むものは尽くを踏み倒し、押し切り、突き抜け。
　強大な壁も突き崩し、前へ進み、前へ前へ。進み続ける。
　
　前を見ている。
　前を見ている。
　感情をむき出し、前を見ている。

　取り戻したい日常があったから。守りたい世界があったから。
　その心を共鳴させて、私達は戦い続けてきたのだから。

「……そろそろ、行き先は決まりましたか？」

　夢色の繭を内側から突き破り、産声を上げる。
　その声は聞き慣れた――私達の"仲間"のものだ。

「じゃあ、行きましょう。その前に――」

　繭の殻が鋭利な棘に変質し、いつの間にか四方から迫るハザマに生きるものを刺し貫いた。

「……まだまだ、忙しそうですね」

　すぐさま臨戦態勢を取る4人。
　握り拳を構え、悠然と立つ響。猛る勇気の力を掲げ、一歩前に踏み出るシュナイダー。
　そして、ひび割れた繭から新生する――私達の仲間、コメット・エーデルシュタイン。

「全く空気も読まずに。最後の最後までやってくれるよ」

　乾いた銃声が二度響く。白と黒の拳銃が、再び迫る異形を吹き飛ばし
　もはや避けられない戦いが我々の眼前に迫っていた。

「……でも、こういうノリは嫌いじゃない。そうだろ？」

　4人の視線が交差した。軽く頷き合うだけで、私達の心は繋がった。

　例え世界に否定されても構わない。私達の繋がりだけは、誰にも――何にも、否定する事は出来ない。

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