［基本］OK.　［戦闘］OK.　［戦闘:エイド1］OK.　［戦闘:エイド3］OK.　

ずっと赤かった空が色を変えていく。

もうすぐ正午になるような秒針も、
黒と赤が混じり合い、夕焼けのような空模様も、
この時間がもう来なくなるんだと思った。

空を眺めていると近くに寄ってくるお義父さんの足音が聴こえた。

「――終わった、ね。」

戦いはアンジニティが勝った。
しらきりさん、アスさん、そしてお義父さんがイバラシティへ行き、
俺はアンジニティに行くことになる。

そう思うと寂しい気持ちになる。
けど、最後くらいは。
強く頼りがいはある、でもどこか脆そうな竜の為に表情を作らなければいけない。
気持ちを紛らわせるように、話しに意識を預ける。なにか、話さないと。

「楽しかった。温泉行ったり、サーキット場に行ったり。
　戦うのは、やっぱり嫌だったけど……
　イバラじゃ一緒に出かけられる事、無いから。」

「ケイ。」

「イバラはお仕事が忙しそうなのと、体の調子も悪かった、でしょ？
　自在に飛べるのはいい。俺も翼、欲しかった。」

「ケイ。」

自分で自分が、どんな表情をしているのか分からない。
いつものように話しているつもりが、声が震えている。
宥めるように俺の名前を呼んでいる。

「私達の旅はここで終わりだ。
　私はこれから、アンジニティで探していた竜を探す。」

「…うん。」

「見つけて、終わるつもりは無い。
　その後、アンジニティにいるお前を見つけてみせよう。」
「…アンジニティにいるお前を心配している訳ではない。
　お前は周りと比較した上で否定するだろうが、
　お前の動物を操る異能は、異能の中でも十分強力な部類だ。
　アンジニティで生きていくのは勿論、使いようによっては、凄惨な事も起こせるだろう。
　その異能を……イバラの母さんが持っていた異能を、
　優しさと一緒にお前が持っている事に誇りを持っている。」

「…ありがと。
　お父さん、だね。」

「義父だって最後くらい、父親のような事をやりたくなるものだ。
　エディアンが世界間を行き来してるんだ、再会も案外近いかも知れないがな。
　いずれにせよ、食べて寝て、生きていれば案外別の大事なものは出来るものだ。
　…だから、生きろ。精一杯今を生きろ。
　それが私からの最後の願いだ。」

ずっと終わったらどうしようかと思っていた。
想い出さえ無くならなければ、作れれば、死んじゃってもいいと思っていた。
その想いを見透かしたように、生きろと言ってくれた。

ぐっと口角を上げる。
泣き出しそうなのを堪えるために。
期待に答えられるような、笑顔をするために。

「……分かった。
　お義父さんこそ、もう無茶は駄目だよ。」

「お互いに、な。」

ハザマの時間が終わりかける空の赤色も不気味だった。
けど、その赤はお義父さんの鱗の色と一緒で、
そう考えると、温かな気持ちが胸からこみ上げてくる。
涙が後から出てくる。嫌な気分は全然無い。

ENo.184 グラウティア とのやりとり