これは青年と---少女の---話

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記録の欠片

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普通に出会って、なんだかすごく気があった。
相性が良かったのかななんて思う。


「先輩さあ、将来の夢とかないの？」


「え？夢？ん～……アイドルのマネージャーとか？」

「あ～いいねえ～ロマンあるわあ」
「でもそれさあ、今そこのポスター見て適当に思いついたやつだよね？」

「やべっバレた」

「バレッッッバレだわ真面目に考えろぉ！おまえの人生だぞぉ！」

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なんてことのない会話から。

「そういうことなら、付き合っちゃう？」

「あ～、うん。それもいいかも」

「じゃあ決まりってことで、あらためてよろしくな～」

ぐしゃぐしゃと頭をなでる。

「あ！まって！髪がぐしゃぐしゃになるから！」

「え？セットしてたの？ごめんそんなおしゃれさんだと思ってなくて……」

「してるよぉ！女子高生だよ！？」

「いや～～～それもそうだけど千花だしなぁ～～～ってまって！やめて！ギャー！」

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「付き合ってみたはいいけど、なんかあんまり前とかわんねえよな～」

「うん～……デートっていうか普通に遊んでるだけだもんね。楽しいけど」

「楽しいけどな。まあでも友達でもいいかもな～これ」

「先輩がそう思うんだったら友達のほうがいいよ」

「じゃあ改めて友達としてよろしくな～」

頭をなでようとして手をとめる。

「いや、不用意なスキンシップは紳士のすることじゃねえな！」

「え、先輩いつから紳士になったの？」

「え、元からですけど？？？」

「え？？？」

「え？？？」

お互いキョトンとした顔で見つめあうのが面白くなって
二人で思いっきり笑った

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「なあ、大丈夫か？」

「なに～？」

「いや、なんか最近元気ねえな～って」

「……先輩さあ、なぁ～んでそんなときだけ鋭いのかな」

「いや、あ～、えっと……まあ言いづらいこともあるだろうし！無理して言わなくてもいいからな！」

「そんなわけじゃないけどぉ……ちょっと最近、異能がうまく……抑えらんないっていうか」

「あ～、ちょっと先の未来を変えるけどとっさに思ったことは変えられない……だっけ？強い異能も大変だよなぁ」

「ぅん～……」

「ま、だからってずっと沈んでても余計悪くなりそうだし。
たまにはちょっとくらい迷惑かけても大丈夫な相手と遊びにいったりすんのもいいんじゃね？俺とかな！」

「遊びに行ってなんかあったらどうすんのさぁ」

「大丈夫！もし暴走しても治したり直したりが得意な異能の人沢山いるからな！
あと暴走抑えられるような強い人たち！その人たちに頼ればいける！」

「そこは先輩が何とかしてくれるとこじゃないのぉ！？」

「それは無理だな！俺がやったら異能の反動で多分寝込むからな！」

「それはそうだけどぉ……さっきのは口だけでもカッコつけるとこじゃない？」

「あ、そうだったかも。……よっし、じゃあやりなおして……コホン。もし暴走しても俺が助けるから大丈夫だ！」

「今更遅いよぉ！！でも……」
「ありがと」

いつも通りの雰囲気で
二人で笑っていた

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なんてことない日になるはずだった。
街をふらふら歩いていた時、千花の姿が見えた。

「おーい、千花～！」

手を振って声をかける。
千花がこちらを振り返った時、その向こうに今にも歩道に突っ込もうとしているバスが見えた。

スリップしたのか、運転手になにかあったのか、原因はわからないが、そんなことを考えている場合じゃない。
このままじゃ千花が巻き込まれる。

「千花っ！」

このまま走っても間に合わない。とっさに昔見た身体強化する異能をコピーして使って駆け寄った。
千花の肩をかかえるようにつかむ。さすがにこれはセクハラとかは言われないと思うけどどうだろうか。

「よっし、間に合っ……」

とっさのことで動けない様子の千花の視線の先にはバスの乗客たちが見えた。
このまま抱えて横にでも飛べば千花は無事だ。だけど、バスの中の人達はどうだ。

このまま千花だけを助けたら、ダメだ。
きっと自分だけ助かったことを責めるに決まってる。

千花が動けないなら、俺がやればいい。

「力借りるぞ」

千花に声をかけてから、集中する。

一瞬先の未来を変える。
具体的なやりかたがわかるわけじゃない。
けど、きっとこうすればいいと信じて、バスが奇跡的に無事で止まる未来へ変わるように願った。

軌道を反らし、ガードレールと擦れる大きな音をたててバスがとまる。
大きな損傷は……ないようだった。

「おーーっし！セーーッフ！これ上手くいったんだよな！たまたまかもだけど！」

よっしゃー、とガッツポーズ。

「千花、大丈夫か？怪我してねえか？」

「先輩……？う、うん、へいき……」

こんな出来事があった衝撃もあるんだろう、まだ落ち着かないようだった。

「はぁ、よかっ」

安心した瞬間、足に痛みが走った。

「あだだだだ！痛い痛い痛い！なんかスジがびきって！びきってなってる！！」

異能の反動がきた。特に一発目がめちゃくちゃ痛かった。泣きそうだ。

「ごめ、俺の方が無理かも……ちょっとやりすぎた……めっちゃいたい……死ぬかも……」

痛すぎてその場に崩れ落ちた。地面が冷たい。
バスから降りてきた人たちが千花に声をかけ、どこかに電話をかけたりしている。

「先輩、いま救急車呼んでるって。バスに乗ってた人もみんな無事みたい」

すぐに戻ってきた千花が声をかけてくれる。

「よかった～。いや～～～今のめっちゃかっこよくなかった？？？どうよ？？？」

痛みに耐えつつ、倒れたままキメ顔で声をかけた。
?
「まぁ……まあ、かっこよかっ……うん。でもドヤ顔はしなくていいよ先輩」

「えっ、そんな……めっちゃかっこいい顔したのに……」

「痛かったら無理しなくていいんだよぉ、痛い顔しなよ」

「ぐ……無理はしてないけど、痛いのは痛いんだよな……救急車くるまで膝枕してくれたら元気出るかも……」

「今はやだ」

「なんでぇ？え～～、ちょっとぐらい良いじゃん元カノなんだし」

「……人多いし……あとでだったらいいよ」

「あ～、そっかそっか」

「代わりに肩なら貸すけど」

「あ、それ助かる～」

いてて、と痛む部分をかばいながら手をかりて半身をおこす。

「…っ！？」

パキ、と何かが割れるような音がした瞬間、急に体が重くなった。
痛みが襲う。

「ぐぅ……っうえ、なんだ、これ……」

すぐに、パキン、となにかが弾けるような音がした。
痛みが激しくなっていく。息苦しい。変な汗がでてきた。

「せんぱい！？」

もう一度倒れそうになったところを千花が支えてくれた。
「千花の異能借りた反動かな～。わ～ここでハグだなんて照れる～」なんて返そうとした瞬間。

直後、まるで石像にひびが入るように、全身に亀裂が走る。

「っうああああ！」

痛い、痛い、体が割れるような、痛い、違う、ほんとに割れて、痛い、痛い、痛い痛い痛い何が何でこんな

「　　　　　　！！」

千花が何か叫んでる
泣きそうな顔見える
あー、なんか声かけてやんねえと

-泣くなよ。かわいい顔がだいなしだよ-そんなキャラじゃないしなあ
-大丈夫、俺は平気だから-いや、どうみても平気じゃねえよなぁこれ

「ち、ばな、俺、」

上手く言葉がでない。
亀裂は広く、深くなっていく。
痛いのかどうかもわからなくなってきた。
なんとか振り絞って声をかける。

「まだ……死にたく、ねえ、なぁ」

やりたいこともやり残したことも沢山あるのもそうだけど
なにより
ここで俺が死んだら、千花は凄ぇ責任感じて、自分を責める
ちゃんと言ってやらないと

亀裂だらけの自分の腕がみえる
石像が砕けてるみたいだなぁなんてどこか他人事のように考えながら
千花の頭の方に腕を動かす

最後くらいおもいっきり頭撫でて、笑顔で言ってやろう
俺が恰好つけて、お前を助けたくて勝手にやったことだから
だからお前は気にすんなって、言ってやんないと

「ちば、な」

伸ばした腕が、頭を撫でる前に
笑った顔を、見せる前に
かけるべき言葉が、おもいが、届く前に

ひときわ大きな音が響き
全てが砕け、崩れ落ちた

少女は絶望したのだろう
腕の中で砕け散る青年を救えなかったことを
少女は自分を責めたのだろう
望むように世界が改変される異能、それは裏を返すなら

死へ向かうように事故が起こったことも
折よく彼が助けに来たことも
自分を守って彼が死んでいったことも

「私が望んでいた」

震える声がこぼれ落ちる
そして暴走と言えるほどの力が渦巻き、少女は願ってしまった

「違う」
「私はそんなこと望んでない」
「望んでない」
「先輩は死なない」


「原因が――」
「私が、いなくなってしまえば、」


そして、世界は塗り替えられた

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これは青年と居なかった少女の存在しない話

http://lisge.com/ib/k/9/r1127.html

▲	「……まだ戦争の決着はついてないから、どっちじゃろうなーって　 　誤魔化したかったんじゃが、やっぱバレるもんじゃな。あはは」

	「そうでなくとも気付く材料はいくらかあったかもしれんが。 　まぁ、お前さんなら良いか」

	「一応、行先は違うと良いなとは言っておくよ。可能性が低くてもな」

	「向こうで一緒になっても歓迎はするが、 　出来るなら望まぬ場所には居て欲しくないんじゃ」

	「とはいえアンジニティに入って急に異能が使えなくなるとか、 　そんな風にはならんじゃろう」

	「世界から出るなり変えるなり、やりたい事があるなら　 　手の届く範囲で手伝うよ」

	「そして、この戦争が終わってもまた会って、 　どこかに遊びに行こう。約束じゃ」

	「……別れの挨拶はいらんようじゃのう。これからも宜しくってことで」

	「ありがとうと、またね、じゃな」

24人の声が響いています。