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「ぼくは此処にいるよ。 だから安心して、リヨ。怖がらなくたっていいんだよ」 (背後から伸ばされた腕は、華奢な体躯を柔く包む。) |
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「会えてよかった。……ずっと心配だったんだ。 きみの活躍を見聞きすることはあったけれど」 (その手はあなたを傷つけることはない。) |
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「頑張ってるんだね、リヨ。 きみなら本当に、世界を換えてしまうのかもしれない。 それでさ。リヨ」 |
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「きみが頑張るために、ぼくが手伝えることはある? きみと相対してしまったぼくにも、きみのためにできること。 いいんだよ。ぼくの手は、身体は。 “ともだち”……リヨを助けるために此処に在るんだから」 |
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「加減を間違えても大丈夫。 殺したって、いいんだよ?」 |
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リヨ 「ぁ、 ……っ、 ヨシ、 ヨ、……シ、 いやだ、怖い、ヨシを、あたしは、っ、なん、で、どうして、……どう、して、」 |
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震えている。声が。手が。 伸ばされた腕に触れられたそれは、ひどく怯えている、ひとりのこどもだ。 |
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リヨ 「……こんな、」 |
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逃げたい。 なにもかんがえたく、ない、 なにも みたくない。 |
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リヨ 「……あたしのために、できる、こと、」 |
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――そうだ。ずっと願っていた。 委ねてしまいたかった。 |
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見る機能を失いたい、何も見たくない、その願いを叶えるように。 |
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瞳から花が生える。 シュウメイギクの花。 |
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リヨ 「 あたしを、 壊して、」 |

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(風もないのに姿がなびいて、花弁が生まれていく。) |

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リヨ 「……トキが、」 「トキが、ヘンなの、……あたしのせい、なのかなって、 ……あたしが、こんなだから」 |
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燃えていく。意志に反して。 |

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シュウメイギクの花。それは願い。 こんな苦しいことから逃げられたら。あの日常をもう一度送れたら。 |
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――淡く光る茎が、身体に、首に、巻き付いていく。 棘の生えたそれは身体を傷付け、おなじいろの血の線をからだにつくっていく。 |
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血が、燃えていく。光を纏う。 |
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リヨ 「……いや、だ、」 |
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花のちからが、強まる。生きようとする力が。 |
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リヨ 「……ごめんね、」 |
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リヨ 「……、ごめ、ん ね、」 |
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「 ごめん、なさい 」 |

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「……壊す? ああ……こんなに震えて、可哀想に」 |
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「大丈夫だよ。それならきっと、殺されるよりも。とびきり、得意なことかもしれない」 |



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花弁がぱちぱちと弾ける。 |
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「怖がる必要はないよ、リヨ。 ぼくとリヨの仲でしょ?」 |

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(穏やかな春の陽が射す。) |
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「ああ、そういえば。トキもぼくを殺したがっていたんだ。 少し前にね、約束をしたんだよ」 |
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リヨ 「……」 |

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リヨ 「……」 |
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「おいで、リヨ」 |

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(散った花弁が収束する。) |

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花弁がぱちぱちと弾ける。 |
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リヨ 「……」 |
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「ああ。何をしたって構わないよ。 だってぼくは、“いつもどおり”でいられる。いつまでも、リヨが望む限り」 |
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(散った花弁が収束する。) |

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リヨ 「……? ……勝た、なきゃ ?」 |
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「おいで、リヨ」 |

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(散った花弁が収束する。) |


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(やわい指先があなたに触れる。) |
| リヨのカード発動! |


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赤い光が強まる。 |
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(やわい指先があなたに触れる。) |

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リヨ 「……」 |
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(かどわかすような温もり。) |
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リヨ 「……」 |
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「考えないで。なにも、なにもかも」 |
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(散った花弁が収束する。) |


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それは意志と反するちから。 |
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(かどわかすような温もり。) |
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リヨ 「……」 |

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(やわい指先があなたに触れる。) |
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(遠鳴りのように、あの街の喧騒が聞こえる。) |
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リヨ 「……まだ、」 |
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(退された花弁は抵抗しない。) |
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リヨ 「……まだ、」 |

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花弁がぱちぱちと弾ける。 |
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(やわい指先があなたに触れる。) |
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リヨ 「……」 |


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リヨ 「……」 |
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(こどもは優しく語りかける。) |
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リヨ 「……まだ、」 |
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(散った花弁が収束する。) |

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リヨ 「はやく、」 |
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リヨ 「……」 |
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(やわい指先があなたに触れる。) |
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「ぼくがいるよ。もう大丈夫だよ、リヨ」 |
| リヨのカード発動! |


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(遠鳴りのように、あの街の喧騒が聞こえる。) |
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リヨ 「……」 |

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リヨ 「……」 |
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(こどもは優しく語りかける。) |
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(花弁が絶えることはない。) |

| ヨシノのカード発動! |
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(こどもは優しく語りかける。) |
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リヨ 「……まだ、」 |
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(散った花弁が収束する。) |

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落ちていく。 |
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リヨ 「……」 |
| リヨのカード発動! |
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ワッ……ワッフ ワ……ゥワウヮッッッッッフゥワ ワッ……(喧嘩慣れしてない犬の動き) |
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(かどわかすような温もり。) |
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「ぼくがいるよ。もう大丈夫だよ、リヨ」 |
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リヨ 「……、そう、 もう、いいよね、 あたし、 あたしさ、 がんばった、 よね、」 |
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リヨ 「 …… ね、」 |
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「リヨ、大丈夫だよ」 |
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(誰かの命が消えていく。) |
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0 0 0 0 1 0 |
3 1 0 0 0 4 |
火 水 風 地 光 闇 |
1 1 0 1 0 3 |
0 0 0 0 0 0 |
0 0 0 0 0 0 |
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「うん。頑張ったね、リヨ。 大丈夫、ぼくは此処にいるよ。壊れたりしないで、ずっと此処に……リヨの傍に」 |
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「ほら、手を貸して。 ……わかる? これがぼくの首だよ。ヒトの急所だ。そしてそれは、リヨも同じ」 |
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「──同じであるはずだったんだ。 辛かったね、リヨ」 (少女の首に咲く花を、幽鬼のあたたかな指が撫ぜ、包み込む。) |
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「……綺麗だよ、リヨ。もう何も見たくない。その願いはとっても素敵だ。 きみならきっと、ぼくの本当の“ともだち”になれる」 |
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「これはね、リヨが望むものを手に入れるために必要なことだよ」 |
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「力を入れてごらん。リヨ」 |
