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―― 耳を圧迫するような、風のなびき。 大きな翼が、上空で羽ばたき―― 急降下してきた!木々の葉が吹き飛ばされる! 大烏の化け物が現れた! |

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ハザマの大地を踏む黒鉄の音。 暗い諦観を瞳に宿した男が、剣を構える。 |

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みゆ 「早く終わらせて読書したいのっ」 |
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尾のように揺れる血濡れた三つ編み。 その一つをつまみあげ、かみかざりの切っ先で 魔女は足元に魔法陣を描きだす。 |
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―― ドーラ・シーラの眷族があふれ出す! |

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呼吸に肩が上下する。 |
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深く吐き出される息。震えるその末尾。 |
| ダーシャ 「……」 |
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巨大なカラス。 呪いに汚れ切った、闇に濡れた暗黒の翼。 せりだすように半裸の女性が現れる。 イバラシティの『異能』とは異質な力。 燐光を放ち空気をふるわす、唄うような魔導の力。 魔法。 おとぎ話のような――というにはおぞましい、悪意を纏った魔女があなたたちを見据える。 |

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魔女の心に流れる冷血が伝染するかのように、 ぞっとするような冷気が蔓延する。 あまたの命を奪い去った黒風が吹く。 |
『♪ひとつ、光のとどかない ふたつ、深い土の中 みっつ、みぃんな死んだのよ』 その女性は、大人の女性だ。 けれども少女のようにころころと笑う。 夢見るようにかろやかに、好奇心に目を輝かせて見つめる。 「 ……うふふっ おはようございまーす!イバラシティのお・か・た。 わたしたちのために、ちょっと屈服してほしいのだわ。ええ、悪いようにはしないもの!」 |

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―― シーラの塔。 蛮勇の戦士。聡明な魔術師。 それはかつて魔女ドーラ・シーラを討とうとした英雄たちの死骸の山だ。 積み上がった死体は塔のごとく空を目ざす、生暖かい腐臭をはなつ魔物の住処となっている。 |


かつて故郷を、世界を救った英雄たちも、今や名をうばわれ、 戦うべき相手の顔も忘れて 怨鎖の剣を振るう。 |


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みゆ 「ページをぺらり、と!」 |
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ダーシャ 「ちっ」 |
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みゆ 「読書の前の準備運動!」 |
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『魔法がわらう』 |

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みゆ 「ページをぺらり、と!」 |

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ダーシャ 「ちっ」 |
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みゆ 「冒険小説をとくと味わえぇぇ」 |
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『魔法がうたう』 |


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みゆ 「冒険小説をとくと味わえぇぇ」 |
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ダーシャ 「……。」 |
| ダーシャのカード発動! |
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これはお前たちに捧げる侵略の狼煙……――― |

ギャア ギャア! |

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次の獲物に視線を移す。 |
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みゆ 「豆腐の角で頭ぶって昏倒すればいいっ!」 |
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みゆ 「ありがとう!後でお茶でもいかが?」 |

ギャア ギャア! |
ギャア ギャア! |
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みゆ 「うん、やっぱり続きが気になるから先にいってるねっ!」 |

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ダーシャ 「ちっ」 |
――――ビリリッ カラスの鳴き声に呼応し 空気がしびれる! |
ギャア ギャア! |

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斬りあげる。 |
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抜身の剣を握り直す——その手はやはり震えている。 |

| シーラ 「わかったわ。 ごめんなさい。 うふふ。 もうやめましょう? 争うなんて。 それにあなたたち、わたしを殺せば夢見が悪いはずよ。 魔女と言ってもわたしは人間。そして女。 あなたたち、ええ、人殺しになるってことなのだわ。 その罪は決して消えないもの。普通の日常になんて帰れない、きっとね。 だから、ね、仲直り。こんな戦いは止め。 関係ないわ、イバラシティもアンジニティも。 私たち同じニンゲンですもの、一緒にどうすればいいか考えましょう。 それがいちばんいいこと、でしょう? わかってくださるかしら、さあ、武器をおさめてこちらへ来て。…」 |
『仲直りをしましょう!』 |

ギャア ギャア! |
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0 0 0 0 0 1 |
0 0 0 0 1 0 |
火 水 風 地 光 闇 |
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| シーラ 「ほら、こちらへ近寄っておいでなさいな。 あなたがた、わたしの従者になるといいわ。 ……」 |
| シーラ 「…あら? にげられちゃったかしら!」 |

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剣先が地に触れる。わずか乾いた血の匂いがする。 |
